2011.10.03
オランダの建築雑誌記者の取材より
以下、オランダの建築雑誌記者からの、尾道の物件「森のすみか」(英名:NEST)/設計:UID一級建築士事務所に関する質問に対する返答を記載します。もともと英語での応答でしたが日本語に翻訳しました。私にとって建築と庭の関係についての考えを述べました。
Q 日本では、造園設計家と協力するのが、若い建築家の中の新しい傾向であるように思えます。建築家は、造園設計家から彼らのデザインに何を貢献させることを期待しますか?
A 建築は既存の環境の中に新しく建てられることで元々の風景を壊しかねません。そこで、建築家は建築がその場所になじんだように見せるようにしてほしいと造園設計者に期待します。建築の空間がその場所にある環境に融合するように、また風景の一部として周囲に溶け込みながらその地に身を降ろすように、と建築を土に還すことを求められます。建築にやさしく寄り添うような造園が私のコンセプトであり、それを期待して建築家も私に造園を依頼します。
Q デザイン過程のどんな段階に、前田さんはこのコラボレーションのためにあなたにアプローチしましたか?
あなたは全体の概念を一緒にそもそも最初からつくりましたか、あなたは、後期段階にマエダさんのデザインを詳しく理解して、高めましたか?
A 前田さんは私とこのプロジェクト以前に2度コラボレーションしたことがあります。今回も設計ができた段階でこの建築に適した造園ができる人として私を選んでくれました。全体の設計は前田さんが行いましたが、後期の植栽の計画に関しては打ち合わせを重ね、どのような高さ、種類の植物を植えるかは私の意見が主となり最初の設計の段階から変更した部分があります。その他ランドスケープデザインも私が行いました。
Q 前田さんが思いついた主な住宅の概念は何ですか、そして、彼はあなたからデザインに何を加えることを期待しましたか?
A 前田さんはこの住宅で建築そのものが庭になるような、住む人にとっての快適な場所を見つける自由が得られる環境をつくろうとしました。蟻の巣のような、建築でもあり環境でもあるようなものです。彼はこの環境がより自然に見えるように植栽などで演出するように期待しました。
Q 詳細にこのプロジェクトへの貢献について説明してください。あなたの風景についての概念とは何ですか?
A 建築は風景の一部です。私はランドスケープでこの建築に新しいデザインを付け加えたというよりも、この場所に新しく付け加えられた建築からその新しさを削ぎ落としてその地になじむようにしたいと思っています。あえて言うならば、この建築の内部と外部を通り抜けるような、自由な空気感のようなものを加えたと思っています。植物がその地に流れる風の通り道を指し示すように、建築に躍動感を与えるように、デザインしています。建築家には想像しにくい音やにおいも私にとってはデザインの対象です。NESTでは、地下通路部分にクリーピングタイムという、涼しい香りがするグランドカバーを使っています。風景は人間がつくるものではなく、もともとその土地にあるものであり、その一部として小さな建築もランドスケープも共存するべきだと思っております。
Q どんな風に、NESTは風景の中の埋め込まれている日本の例外的な例ですか?
A NESTは建築の中に庭があることが特徴的だと思います。それも、地下から風が入り込み、庭を通って天井に開けられた穴を通り抜けることで植物にとっても内部でありながら苦しくない環境であると同時に、中で暮らす人間にとっても快適な環境であることがこの建築のすばらしいところです。今まで庭は建築の外部にあるという印象が強かったですが、このプロジェクトは建築の内部にまで植栽が入り込んで来ていることに、より環境に近い風景を実感できます。
Q あなたがよく使う、建築と庭の間をやさしくつなぐランドスケープのツール(材料、仕上げ)は何ですか?
A 苔や下草などのグランドカバーは建築を土とつなぐための重要な材料です。近頃はアスファルト舗装などで本物の地面を見ることもすくなくなりましたが、グランドカバーによってその場所に土があることを認識させてくれます。今回用いたクリーピングタイムも、香りが出ることで庭で暮らしている生活を実感できるようにするため、よく使います。
Q あなたの意見では、何がNESTを住んでいる居心地の良い場所にしますか?
A 涼しい風や植物の爽やかな香り、雨の音、四季の移ろいで変わる葉の色までも人間は感じ取ることができます。それはとても幸せなことです。そのことに気づかせることが庭の役割だと思っています。建築が人間を雨風や自然の脅威から守り、その自然の一部を五感で体験できる庭が理想だと思っています。NESTはそのことを再現した新しい環境づくりの1つです。建築と庭の境界が消えながら両者が共存している状態こそが居心地のいい場所の代表例です。
〈 荻野 寿也 〉
■「森のすみか」 建築設計:UID一級建築士事務所
2011.06.25
庭屋一如
私の庭づくりについて、「建築を選ばない」という評価をいただくことがあります。数多くのプロジェクトに今まで携わって来て、建築に寄り添う庭を心がけてきましたのでそう言っていただけるのは誠に嬉しいことであります。御陰様で庭の存在を大事にされる建築家の方とのお仕事も多く、いい庭づくりができる環境に恵まれております。非常にうれしい傾向です。私としては建築を選ばない庭であると同時に、それぞれの建築に合う表情の樹木や草花を選び、その場所にしかないような風景を目指して庭づくりをしております。そのため、その物件やその土地の風土に関して勉強したり、樹種の選択などの設計段階からも入念な準備を重ね、現場に備えるようにしております。
日本の原風景を再生することが庭をつくる上での私の本意ですが、私が手がけた庭が現代建築にも合うとすれば、そこには何か共鳴するものがあるのだと思います。
日本人は古来から自然と共に生きてきました。都市が発達するにつれて建物が密集し生活範囲が狭くなっても、庭をつくって暮らしの中に光や風、植物を取り入れ、より快適で安心できる空間を求めてきました。狭い国土の中でもさらに狭い土地で窮屈な中にも坪庭や奥庭をつくり、四季折々の情緒を楽しんだのです。そのような自然が生活の中にあることを願う感覚のようなものが現代人にも残っていると思います。その気持ちを蘇らせ、生命感溢れる生活をイメージできるような空間が現代には必要なのではないでしょうか。そのイメージを実現するには建築と庭の間の境界は必要ないと思います。庭屋一如とは、人間や樹木、草花、鳥、光、風といった自然界のあらゆるものが分け隔てなく出会うことができる場所を生み出すことだと考えております。
〈 荻野 寿也 〉
2011.04.30
希望
庭をつくるという行為は、未来を確信するということにつながっていると常々思っています。植物を育てること自体が未来を創造することに他ならないからです。
今は社会全体が行き場のない閉塞感で蔓延しているようにも思えますが、「希望」をもって、明るいニッポンの「未来」を確信して、コツコツと自分に与えられた仕事を全うする。作庭家の私は、そんな気持ちで毎日を過ごしています。
「こころの庭」は希望にあふれたものがいいと思います。
私の尊敬する作庭家の武部正俊さんも推薦の図書で
「庭の小道から」(スーザン・ヒル文/アンジェラ・パレット絵/新倉せいこ訳 西村書店)
があります。
大好きな文章を下記に引用いたしました。〈 荻野 寿也 〉
「庭づくりをする人たち」
人間の行動のなかで、子どもを産むことは別として、庭づくりがいちばん楽天的で、希望にあふれたものです。庭づくりをする人は計画的で、少し先のことでもずっと先のことでも、将来を信じ確信している人なのです。インゲン、エンドウマメ、リンゴ、プラム、バラ、ボタン
いろいろな植物の種を蒔いたり、植えつけたり、接ぎ木をしたり、ふやしたりするのは、将来に対して積極的な賭けをするということです。これからまだ何週間も、何か月も、何年もあるのだと宣言するようなものです。50年や100年以上もかかる苗木を植える人にいたっては、楽天的なばかりか、次の世代にとっての恩人でもあります。
いつも戦争のことを考え、それを予想してこわがっている人、人類と地球の終末を思う人、魂がしぼみ、時代の困難や脅威に打ちひしがれている人、希望も慰めもないと思い、新しい夜明けのかすかな光も見ようとしない人。そんな人には、庭づくりをおすすめします。庭づくりをすると、勇敢で大胆に、やさしくて冷酷に、きちょうめんででたらめに、おだやかで忍耐強くなることを、順ぐりに覚えていきます。何よりも今日という日を満喫し、明日に希望を持つことを覚えるのです。
(「庭の小道から」(スーザン・ヒル文/アンジェラ・バレット絵/新倉せいこ訳 西村書店)から引用)
「庭の小道から」(スーザン・ヒル文/アンジェラ・バレット絵/新倉せいこ訳 西村書店)から引用
「庭の小道から」
スーザン・ヒル文/アンジェラ・
バレット絵 /新倉せいこ訳
西村書店
2011.04.27
既にそこにあったかのような風景
本物件は、クライアントが「Pocket Garden」という本で私の仕事を見て連絡をくれたことに始まります。オフィスをリニューアルするということで、その空間づくりに関わることになりました。
心掛けたのは「原風景」をつくることです。眺めるだけでなく、自然の力や立ち現れる空気感を体感できる場をつくろうと考えました。
オフィス兼プレスルーム、そしてブランドコンセプトを発信する場でもあるため、湿気や臭気などの調整と維持管理が課題でした。ここでは、無機質軽量土壌と排水・通気システムを組み合わせた工法を採用し、解決しています。また光合成には室内光だと十分ではないため、夜間に植物用人工照明を点灯し、翌朝まで照射しています。
植物は生き物ですので状態が悪くなることもあります。その時は山に戻して休ませます。作業には手間が掛かるため、クライアントや働く人の理解があってこそ成立します。この風景を体験することで得られる安らぎや心地良さから、訪れる方々にささやかな喜びを感じてもらえればと考えています。〈 荻野 寿也 〉
(「商店建築4月号」の記事より抜粋。Sisiiオフィス・プレスルームの庭)
「商店建築4月号」より抜粋。Sisiiオフィス・プレスルームの庭
商店建築
2011 vol.56 no.04
2011.04.02
「庭の存在」について
Q.住宅における「庭」の存在をどのように考えてられますか?
A. 私にとって庭というのはそれだけではなく、常に建築やまちと共にあるものだと
考えております。またその2つをつなぐことができるのが庭だと思います。そのた
め庭という存在を主張するのではなく、建築、庭、生活といったものごとが全体と
して1つの風景になって立ち現れるような、そんな空間を目指しながら庭とは何な
のかということをいつも考えながら庭をつくっています。その上で、その場所に元
々あったであろう風景、記憶としての原風景を蘇らせることで、現代に生きる私た
ちが今まで気づかなかったことを呼び起こしたり、新たな発見や驚きを促すような
空間を生み出すことが私の仕事だと考えております。
(「I`home」 No.48 庭特集でのインタビューより抜粋)
I'm home
2010 NOVEMBER No.48